真夏のクリスマス/水原とほる

真夏のクリスマス (白泉社花丸文庫BLACK)

真夏のクリスマス (白泉社花丸文庫BLACK)

あらすじ引用
孤児として育ったキヨとダイスは幼い頃から愛を誓い合い、孤児院を出てからも共に暮らしていた。
街の居酒屋で働く二人のところに弟分だったテオも加わり、キヨはとても幸せだった。
しかし、ダイスとテオがマフィア相手に事件を起こした代償に、キヨはマフィアの愛人として囚われてしまう。
それでもダイスに会いたいという想いだけがキヨの支えだった。
気が遠くなるほど時が流れたある日、ダイスがマフィアの次期ボスとしてキヨの前に現れて……。

★★★★★

結論からいうと、もーーーーめちゃくちゃ良かった!です!
水原さんは初期のころ、いわゆる「痛い系」の作品が素晴らしくて、わたしが愛してやまないヤクザもの(笑)が非常に上手な作家さん。わたしが好きな水原作品は「夏陰」「唐梅のつばら」「青の疑惑」あたりで(わかりやすいですねわたしの嗜好が!)、そのころの衝撃が忘れられなくて新刊が出るたびに買っている作家さんのひとりではあるんだけど、最近の作品は(ご本人もあとがきで言ってたけど)オブラートに包めばほのぼの、言葉を選ばずにいえばぬるいものが多くて読むたびがっかりしてたんです実は。
でも初花丸文庫、しかもBLACKで書かれると聞いてすごく楽しみにしてて発売日に買って速攻で読んだんですけども…もう素晴らしかったー。久々に素晴らしい水原節。
ダイス(攻)とキヨ(受)は孤児院出身で身寄りがないから、ずっとふたりだけで生きてきてそれが愛情になったのもごく自然なことで、だからこそ強い絆があるっていうのがすごく説得力があるし、キヨがマフィアのボスの愛人にされ引き離されても、再会するまでまったくお互いの気持ちが揺らがない。おとぎ話みたいなレベルで。こういう設定って以外とBLでは少ないんだけど水原さんの描き方が巧みなので無理が無く却ってそれがとても良かった。そして、ダイスとキヨがどこまでも愛を貫くからこそ切なくて、そのふたりをずっと近くで見つめるもうひとりの幼馴染み・テオの健気さもまたせつない。そのせつなさを全編通して引き摺りながら、結末に向かって行く。
レ―ベルはBLACKだけど、過去作と比べてみてもエロはそこまで多くない。でも読み終わったときにこのレーベルで出たことの意味が理解できたし、すごく納得がいきました。
小山田あみさんのイラストも素敵すぎるので、これは本棚行き決定。大好きな水原作品の1冊に加わりました。BLにある種のハッピー感を求めるひとにはどうかな…と思うけど、シリアス好きの方には諸手を上げてオススメします!